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関連資料(刊行物)

目 次   19世紀前半   19世紀後半   20世紀以降

▼▼▼▼ 書 籍 ▼▼▼▼

書名:Antonin Carême, 1783-1833 : La sensualité gourmande en Europe
著者:Georges Bernier発行年:1989年言語:フランス語
概 要 カレームの評伝というよりは、カレームの業績を核に18世紀から19世紀にかけてのパリの美食文化について論じた本格的な評論です。18世紀のラ・シャペルらによる新しいオート・キュイジーヌ(高級料理)の料理書の登場に始まって、グリモ・ド・ラ・レニエールによる美食ジャーナリズムの登場へと続き、さらにカレームの時代へと移行していくにつれて次第に美食文化が洗練されていくその過程をていねいに掘り起こしています。
ですから、カレームの生涯を扱ってはいますが、その中心をなすのはあくまでもパティシエとしての、あるいはキュイジニエとしての業績です。他の類書に必ずあるカレームの幼少時に父親から捨てられたエピソードについては軽く触れられているだけです。カレームのパティスリーや料理のどこが革新的だったのか、そしてそれがなぜフランス料理の世界に大きな影響を与えることができたのか、その疑問に答えてくれる力作です。

書名:Antonin Carême de Paris: 1783-1833
著者:Louis Rodil発行年:1980年言語:フランス語
概 要 戦後に出版されたカレームの評伝としては比較的早い時期に現れたもののひとつですが、ページ数としては後半の付録を含めても75ページほどの小冊子です。このボリュームの小ささは、おそらくカレームに関する資料の少なさを反映しているのではないかと思います。
評伝の部分は正味30ページほどで、ここではカレーム自身の著作の中の記述やファヨの記事等さまざまな資料を使いながらタイムラインに沿ってカレームの業績を書き留めていきます。
後半の付録では白いコック帽に対するカレームの貢献についての論説や、カレームが手がけたエクストラのメニュー、さらにはカレームが開発したレシピなども掲載されています。
残念なことに利用した文献・資料についての目録が一切ないので、書かれた内容について読者自らが検証することはできません。この点も含めて、本格的な研究書というよりはちょっとしたレポートといった趣の強い書物です。

書名:Le Roi Carême
著者:Philippe Alexandre & De l'Aulnois発行年:2005年言語:フランス語
概 要カレームのパティシエ・キュイジニエとしての華麗なキャリアを歴史家の視点から調査し、18世紀から19世紀にかけての貴族や政府高官の豪奢な暮らしぶりとの関連を探る力作です。カレームはなぜタレーランやアレクサンドル1世、ジョージ4世といった当時のヨーロッパ社会を代表するエスタブリッシュメントたちから重用されたのか? それを可能にしたカレームの並外れた能力に迫ります。
残念なのは、利用した文献や資料のリストがないこと。学術書ではなく一般書であるにしても、記述の信頼性の観点から言って文献目録は欲しかったところです。それと、目次がなく全体に通し番号がついているだけなので、読みやすさの点でもやや難があります。意欲作であるだけに惜しいといわざるを得ません。

書名:宮廷料理人アントナン・カレーム
著者:イアン・ケリー発行年:2005年言語:日本語
概 要Ian Kelly のカレームの評伝「Cooking For Kings, The Life Of Antonin Carême」の邦訳。邦訳されている海外のカレーム関連の書籍ではほとんど唯一の本格的な伝記です。誕生から死に至るまでのカレームの生涯をかなり詳細に追っています。よく調べたなと感心する一方、記述には著者の間違いや勘違いも多く、厳密な資料批判は行なっていないという印象です。読み物としては良くできているので、正確さにこだわらなければ面白く読めるでしょう。
邦訳版は現在は絶版になっており、Amazon で中古本が入手可能ですが、プレミア価格になっていてやや手を出しにくいかもしれません。
それはちょっとね、という方はオリジナルの原書(中古本)が入手可能ですのでそちらをどうぞ。

書名:Crescendo of the Virtuoso; 1-2. Carême, Chef de Cuisine
著者:Paul Metzner発行年:1992年言語:英語
概 要さまざまなジャンルでその道を極めた巨匠の仕事を論じた評論集。第1部第2章でカレームを取りあげており、その功績を丹念に拾い上げた好論文になっています。原著をきちんと読み込んでいると見られ、その論述はていねいかつ正確です。
書籍として有償で販売もされていますが、インターネット上で全文が無償で公開されており読むことができます。表紙画像をクリックすると第1部第2章に直接ジャンプします。

書名:Accounting for Taste: The Triumph of French Cuisine
著者:Priscilla Parkhurst Ferguson発行年:2004年言語:英語
概 要 全体としては、フランスの属性とも言うべき華麗で洗練されたフランス料理がどのようにして生まれ発展してきたのかを論じた学術的な食文化史の書物です。その中で、第2章をまるまる使ってカレームが論じられています。ここで著者が議論の中心に据えるのは“カレームの革新性”です。この革新性について、時代的なバックグラウンドとその波に合わせるように自らの可能性を切り開いていったカレームの意識の高さを指摘しながら緻密な論理を展開しています。後半はその革新性とカレームの料理の関係を扱っています。
著者はコロンビア大学の教授を務めるアメリカ人ですが、ヨーロッパ以外の国でここまで真面目にカレームを論じた書物が出版されるというのは、少し羨ましい気もします。
Google Books で内容のほんの一部ですが閲覧することができます。

書名:お菓子とフランス料理の革命児 ぼくが伝えたいアントナン・カーレムの心
著者:千葉好男発行年:2013年言語:日本語
概 要 著者の千葉好男氏はパリで40年以上もパティスリーの店を経営するオーナー・パティシエ。カレームへの思い入れがかなり強いらしく、ファンとしての心情が全編に満ち溢れたいわばラブレターのような1冊です。フランス食文化史の専門家ではないのであまり多くを期待すべきではありませんが、論証ははっきり言って大雑把。ただ、少なくともカレームの著作にはひと通り目を通してしており、その点は評価できます。また、カレームに関する主要な文献も参照していてその引用が本書の大部分を占めていると言ってもいいほどですが、惜しむらくはそうした文献を批判的に捉える視点がないためにそこに著者独自の見解を加えて自論を展開するというレベルにまでは達していません。いろいろな意味でイアン・ケリーの「宮廷料理人アントナン・カレーム」のダイジェスト版のような印象です。
それと、内容はともかく、Carême を“カーレム”と発音するのはちょっと違和感があります。著者はフランス人の発音に最も近いと書いていますが、フランス映画の「晩餐」を観てもやはり“カレーム”もしくは“カレム”と聞こえますから。

書名:ガストロノミー ~食卓をめぐるもうひとつのフランス革命~
著者:長尾健二発行年:2012年言語:日本語
概 要その前史から誕生、発展を経て20世紀のヌーベル・キュイジーヌにいたるまでのガストロノミーの全容を追った解説書。通読することでフランスの近代史についての知識も得られます。もともと韓国の製菓専門誌に連載された読み物を単行本化したものでオリジナルは韓国語です。日本語版は刊行されていないのですが、著者が作成した日本語版のPDFが無償で公開されています。
全6章のうちの第4章がまるまるカレームに当てられていて、さまざまな面からカレームという存在を捉えています。中にはこれまで一度も紹介されたことのないエピソードも。画像をクリックすると第4章のみがPDFで閲覧できます。

書名:歴史をつくった洋菓子たち
著者:長尾健二発行年:2017年言語:日本語
概 要日本でも良く知られるさまざまな洋菓子について、その由来や誕生にまつわる伝説を集めた一般向けの読み物。洋菓子の由来には「~を最初に創作したのはカレームである」といういわゆるカレーム伝説がつきまとっているものがいくつもありますが、それらの根拠を当時の資料を使って検証するなど、従来の常識に囚われない視点が貫かれています。2部構成で、第1部は洋菓子の歴史を知る上で参考になる基礎知識ですが、その中にカレームがひとつの項目として立てられています。カレーム伝説がなぜ生まれたのか、それを読み解くことで第2部の洋菓子の由来・伝説の本編がより興味深いものになるでしょう。

▼▼▼▼ 論文・コラム・エッセイ ▼▼▼▼

題名:Carême ou les derniers feux de la cuisine décorative
著者:Jean-Claude Bonnet発行年:1977年言語:フランス語
概 要 筆者のジャン・クロード・ボネは「フランス国立科学研究センター(CNRS)」の名誉研究員で18世紀およびフランス革命を専門とする歴史学者。特にセバスチャン・メルシエの研究で知られています。
本論文「カレームもしくは装飾的料理の最後の炎」は19世紀のロマン主義思想をテーマとする学術系季刊誌「Romantisme」に掲載されたもので、フランス革命後の恐怖政治時代を経た19世紀初頭の“健康と食”へのブルジョワ層の関心の高まりを背景にカレームに代表される華麗な料理芸術が登場した事情について論証しています。カレームのアンシャン・レジームのスタイルを継承しながら同時に革新的な料理技術にこだわるという2面性に着目し、それを19世紀初頭の時代に特有の現象であるとしてその背後にあるものを浮き上がらせようというのがこの論文の狙いです。
論文の左上にあるアイコンの中のをクリックするとPDF版を閲覧することができ、ダウンロードも可能です。

題名:The Fabriques of Antonin Carême
著者:Peter Hayden発行年:1996年言語:英語
概 要 カレームの建築志向に注目してその業績を紹介する小論。タイトルにある“Fabliques”というのは想像上の建築模型のことで、これはもちろんカレームが得意としたピエス・モンテを指しています。正味4ページほどの分量なので、カレームの著書である「Pâtissier Pittoresque」を中心にその建築的な仕事をざっと概観したという印象です。
なお、この論文を紹介している JSTOR は文献検索のポータル・サイトで、基本的に有料ですが一部の論文は無料で読むことができます。ただしそれには登録が必要ですが、登録料は無料で誰でも登録できます。ダウンロード(有料)も可能です。
登録はこちらから。

題名:Russia, Carême, and the Culinary Arts
著者:Darra Goldstein発行年:1995年言語:英語
概 要 これもやはり JSTOR で読むことのできる論文です。カレームのロシア料理への影響を論じたもので、ナポレオン帝政の崩壊後に始まったカレームとロシア皇帝アレクサンドル1世の交流を軸にかなり突っこんだ内容になっています。カレームとロシアの関係に絞った資料は少ないので、その意味では貴重な文献といえるでしょう。
JSTOR に登録してあれば閲覧は無料、ダウンロードは有料です。

題名:Writing Out of the Kitchen: Carême and the Invention of French Cuisine
著者:Priscilla Parkhurst Ferguson発行年:2003年言語:英語
概 要 先に書籍のコーナーで紹介している「Accounting for Taste」の著者による論文ですが、内容は同書の第2章とほぼ同じです。つまりこの論文に加筆訂正して「Accounting for Taste」の第2章にしたと考えられます。
JSTOR で参照できますが、残念ながら無料の閲覧はなく、有料でダウンロードする必要があります。

▼▼▼▼ 創 作 ▼▼▼▼

書名:Le Cuisinier de Talleyrand
著者:Jean-Christophe Duchon-Doris発行年:2006年言語:フランス語
概 要 時は1814年秋。ウィーンではナポレオンが皇帝の座から陥落した後のフランス帝国の処遇をめぐってロシア、プロイセン、英国、オーストリアが駆け引きの真っ最中だった。そこで突然起こった殺人事件。捜査に当たったブラドスキ警視はフランス代表団の厨房が事件の鍵を握っていると目星をつける。そこで、フランス代表のタレーランに随行していた希代の料理人アントナン・カレームに協力を仰ぎ、事件の真相へと迫っていくのだが・・・
とまあ、こんな筋書きのミステリーです。カレームがウィーン会議に随行したという事実は確認されていないのでそれだけでもまったくのフィクションですが、カレームが探偵役なんてちょっとワクワクしてしまいますよね。
残念ながら日本の Amazon では扱っていません。画像をクリックするとアメリカの Amazon に飛びますが、フランスの本を買うならやっぱりフランスの Amazon でなくっちゃ、という方はこちらへどうぞ。
日本語訳があればいいのに。

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